速耳トレよもやまコラム

[03]ご注意!脳力開発商法

 速耳トレーニングは、速ければいいの?速耳マスターは6倍速に対応してるけど、速いスピードで聴いた方が効果が上がるの?・・・と思ってしまいがちですが、脳科学の目から見ると、スピード狂になるのは、脳の鍛錬という意味ではまったく無意味だそうです。

 
 速読のところでも、「速読商法」という書き方で同じようなことを書いていますが、まぁ速耳(“速○”とか“○聴き”とか“速○聴”とか…)でも状況は同じですね。
 
 この高速な音声による脳力活性化という発想は、基本的にSSI社の田中氏が日本に持ち込んだものです。そしてこの音声トレーニングは、ノウハウがいらないように見えるために他社がまねをしやすかったために、急速に多数の会社や個人から商品が出されるという事態が生じました。
 
 確かに脳科学でもその効果は認められているのですが、実際のところ脳の活性化が見られるのはせいぜい2~3倍速の音声を聞いたときの話。しかも、その効果は自覚できるほどのことではありません。「なんとなく○○な気がする」という程度です。
 
 速読なら、修得すれば本を短時間に読めるようになりますので、効果を実感しやすいのですが、こちらは周りに黒柳徹子さんでもいない限りは効果を実感しにくいんですね。そして、まぁ2~3倍という、それまで聞き取れなかったスピードが聞き取れるようになると、なんか効果が出たような気がするんです(実際、英語が聞き取れるようになったり、人の話を集中して聞き取れるようになったりという効果は1ヶ月程度で実感できるでしょう)。
 
 3倍ぐらいまでなら確かに慣れれば聞き取れるようになります。が、たいていそこまでです。それ以上は原稿を見ながら聞くか、同じものをゆっくりから何度も聞いていかないと聞き取れるようにはなりません。テレビ番組で9倍を聞き取るという人が紹介されましたが、あれは非常に短いフレーズで、しかも誰でも知っていることわざです。つまり聞き取っているのではなく、音の断片から推測しているわけです。長い文章だったらおそらく聞き取れないはずです。
 
 しかし、業者はさらに煽ります。「うちのは音質がいいから10倍速でも…」、「世界最高水準の技術で16倍速を…」なんて感じです。なんかすごそう・・・音がよければ聞き取れるのか・・・いや聞き取れなくても右脳が処理しているのか・・・それでトレーニングをしたらすごいことになるのか・・・と思わせてしまうわけですね。
 
 どうせ脳の中のことだから誰にも分からない。自分も「これで脳が活性化しているのだ!」と思いこめば、それなりにハッピーになれますし。いわゆるプラシーボ効果というやつで「これを実行すれば、○○の効果がありますよ」と言われると、本当にそういう気がする。しかも、小さな効果を感じていますので、「きっと○○の効果もあるに違いない」と信じやすいんですね。
 
 しかし、音質が良かろうが悪かろうが、4~5倍を超えたら人間の耳には聞き取れないんです。音質についても、どんなに最高水準の音質だろうがなんだろうが、音の波は確実に崩れます。右の図をご覧ください。業界最高水準をうたう某社のソフトで再生した音の波形です。そして2~3倍なら、多少音質が悪くてもトレーニングには問題ありません(雑音が混じるのは考えものですが。)
 
 その下のもう1つの図は、6倍速で再生された音の波形です。これが耳で聞き取れるのか?音声として脳が認識できるのか?未だに科学者ですら研究していません。10倍速で右脳が活性化するなどとうそぶく業者さんは、どこで「右脳が働く」ことを測定したのでしょうかねぇ。今現在の科学的研究を基にして冷静に考えれば、脳が活性化するのは音声(言葉)として聞き取れる範囲の音声を聞いたときだけです。通常のスピードの音声を聴く実験でも、文章として成り立っているものを聴かないと脳が活性化しないということが確かめられています。これは、つまり音声のスピードというよりも、文脈を脳が一生懸命に考えることにこそ、脳の活性化のポイントがあり、スピードを上げることが不可を大きくするということにつながるからこそ、脳力開発トレーニングとして価値がある、ということを示唆していると考えます。音声として聞き取れるから、脳が「がんばって聴かなければ!」とがんばるわけですね。
 
 もちろん、たんに「未科学」というだけで、それを「非科学」であると断じてしまうのはあやまりです。まだまだ科学では検証できないこともたくさんありますからね。しかし、何の科学的根拠もなく科学的な用語を振り回すのはどうかと思いますし、経験にすら基づかない妄言を堂々と本やHPに書くのはどうなんでしょう?これって罪じゃないの?って思うのは私だけではないでしょう?
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投稿者 てら : 2008年03月25日 21:13

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